『近代とはいかなる時代か―モダニティの帰結―』5章
Ⅴ ジャガーノートに乗って
1. ジャガーノートに乗って(P.188〜191)
※ジャガーノートとは、超大型長距離トラックのことで、ギデンズは、モダニティ の比喩として、使っている。人類が団結してある程度まで、乗りこなすことはできるが、同時に突然操縦不可能になる恐れがある車(モダニティ)のこと。
・問題提起・・・何故、人類の理性は世界を予測・統率できないのか(ジャガーノートをうまく操縦できないのか)
1.《意図しなかった帰結》・・・システムの複雑さ
2.《社会的知識の再帰性》・《循環性》・・・社会的世界に新たな知識が投入されるため、決して安定不変の環境を作れない
3.《権力の偏在》・・・世界は、権力の不平等によって、根底から分裂している
4.《価値観》・・・経験的知識の進展が、価値態度間での、意思決定を許さない。
2. ユートピア的現実主義(P.192〜197)
・ 《ユートピア的現実主義》モデルの創造の必要性(ユートピア的理念と現実主義とのバランスを保つこと)
・ 批判理論のとるべき形(徹底的な社会参加)
ローカルなことがらの政治化 ―----------------------- グローバルなことがらの政治化
3. 未来への方向づけ―社会運動の役割(P.197〜202)
・社会参加が近代において、重要な意味を担うため、社会運動は、未来の潜在的変容可
能性の指標として、重要である。
1. 労働運動・・・資本主義・工業主義の発達に伴う
2. 言論の自由や民主化を求める運動・・・近代国家の監視活動とともに、生じる
3. 平和運動・・・軍事力・警察力の抑制
4. エコロジー運動・・・工業の発達とともに生じた
・ 社会運動は、未来を実現させるための媒介手段である。しかし、ユートピア的現実主義は、権力の行使を有害とは、認めず、現実主義の中心的要素と考える。
4. ポスト・モダニティ(P.202〜214)
・ ポストモダンの秩序の輪郭(地球規模で、捉えていく必要がある)
↓
・ポスト希少性システム(全地球規模での一元化・ユートピア的)
1. 資本主義における不平等を是正し(主要な生活財の不足なし)、市場は、剥奪状
態の維持ではなく、情報伝達装置として機能する。
2.国民国家の位置づけの変化(上部・下部の生成)と、一元化された政治秩序(国際協調など)
2. 戦争という手段が、重要性を失うことはないが、戦争のない世界を描くことは、 現実性を欠かない
3. 創出環境として、地球環境の介護を目的。EX.『ガイア仮説』
・このような想定を明らかには、行うことは、できないが、現実のものとなる可能性もある
・コメント
・『モダニティ』という怪物を批判、分析するにあたって、本章では、ユートピア的現実主義が重要になる。『モダニティ』をただ、批判するだけでなく、反ユートピア的認識に立ちながら、両者のバランスを取ろうとするのが、ギデンズの姿勢である